アルカリ骨材反応抑制工法 ASRリチウム工法 技術資料(初版)
【第Ⅰ編 設計・施工基準】
2.適用範囲及び適用構造物
2.1 適用範囲
構造物より採取したコアの膨張量は、ASRによるコンクリート劣化のポテンシャルを評価する上で、重要な指標となる。促進膨張試験結果におけるコアの全膨張量の指標は0.052%あるいは0.10%などの基準値が提案されているが、これまでの我が国の実績からは、この値が0.10%以上であれば有害な膨張を生じ、使用性能および耐久性能の低下を招く可能性が高いと考えられている。しかし、促進膨張試験はあくまでも促進環境下での結果であり、現実の環境下における膨張量ではないことも考慮して、本工法の適用範囲を下記のように設定する。
(1)劣化過程が【進展期(Ⅱ)】以上であり(図2.1-1参照)、
かつコアの膨張量が各機関の定める基準値を超える構造物
(2)劣化過程が【進展期(Ⅱ)】以上であり(図2.1-1参照)、
かつコアの弾性係数がコア圧縮強度から推定される健全なコンクリートの弾性係数より低下
(図1.3-4参照)している構造物
(3)劣化過程が【進展期(Ⅱ)】以上であり(図2.1-1参照)、
かつコアの圧縮強度が設計基準強度より低下(図1.3-4参照)している構造物
のいずれかに該当する構造物
図2.1-1 ASRの劣化過程2.2 適用構造物
本工法は非常に簡単な原理を用いているためRC・PC構造、橋梁上・下部工などほとんどの構造物に適用することが可能と考えられる。ただし、最大躯体厚については、ダブルパッカーを設置するために必要な圧入孔の直線性確保の観点から、片面のみしか圧入孔を設置できない場合には3,000mm程度、両面に圧入孔を設置できる場合には6,000mm程度が上限となる。
また、抑制剤(亜硝酸リチウム)の成分である、亜硝酸塩及びリチウムは過度に流出・摂取すれば環境及び人体に悪影響を及ぼすため(参考資料1.ASR抑制剤の安全データシート参照)、上下水道施設等を対象とする場合にはその適用性に十分な検討が必要となる。
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