アルカリ骨材反応抑制工法 ASRリチウム工法 技術資料(初版)
【第Ⅰ編 設計・施工基準】
3.使用材料・使用機材
3.1 抑制剤
リチウムにはASR膨張を抑制する効果を期待することができる(「1.4.1 リチウムのASR膨張抑制効果」参照)。
ASRの補修材料として使用できるリチウム化合物として表3.1-1に示す7種類が挙げられるが、これらのリチウム化合物の中でも亜硝酸リチウムは下記に示すような特徴を有している。
①:浸透拡散性に優れる。
②:水に溶けやすく高濃度化が図れる。
これらの特徴は、抑制剤をコンクリート中に内部圧入するという本工法の施工方法に極めて有効である。したがって本工法に用いる抑制剤として亜硝酸リチウムを主成分とする水溶液を採用することを基本とする。
図3.1-1に亜硝酸リチウム水溶液の荷姿を示す。
次頁に、「表3.1-1 リチウム化合物比較一覧」を示す。
3.2 抑制剤圧入システム
抑制剤圧入システムを図3.2-1に示す。システムは、①圧入装置、②配管装置、③加圧パッカーに分類される。
3.3 圧入装置
本工法に用いる抑制剤圧入装置とは、抑制剤をコンクリート中に一定の圧力で確実に供給するための一連の装置であり、ガス圧式圧入装置と油圧式圧入装置の2種類に分類される。これら2種類の圧入装置は圧力供給原理が異なるだけで、圧入能力や施工性などの基本性能は同等である。
表3.3-1に気圧式圧入装置と油圧式圧入装置の概要を示す。
3.3.1 ガス圧式圧入装置
ガス圧式圧入装置(図3.3-1)は、一定の注入圧を一定期間保持し、抑制剤を窒素ガス圧にて加圧してコンクリート内部へと供給する装置である。
注入圧力の設定は装置に設置されているレギュレータにより行う。装置上部には各種バルブ、メータ、減液管理目盛りが備え付けており、全ての圧入管理作業はこれらの機器類により行う。
ガス圧式圧入装置を用いて施工する場合、試験加圧注入工には専用の圧入装置(図3.3-2)を使用する。
ガス圧式圧入装置仕様 寸法;外径φ216(内径φ204)× 高さ890mm(有効高さ878mm)
容量;26.2 ℓ
分岐仕様;標準20分岐/台
ガス圧式圧入装置のタンク内に充填した抑制剤を窒素ガスにて加圧するために、下記の2機材を併用する。
①窒素ガス(図3.3-3)
②バルブスタンド(図3.3-4)
窒素ガス、コンプレッサーの選定においては、現場の立地条件・施工条件を考慮し選定するのが望ましい。バルブスタンドは窒素ガスの供給圧を各圧入装置に振り分けるものであり、現状基本仕様としては8分岐である。
ガス圧式圧入装置とバルブスタンドとの接続および各圧入孔への配管は、柔軟性に富むウレタンチューブ(φ8mm)により行うことを基本とする。
図3.3-5にガス圧式圧入装置とバルブスタンドの配置例を示す。
3.3.2 油圧式圧入装置
油圧式圧入装置(図3.3-6)は、一定の注入圧を一定期間保持し、抑制剤を装置内部の油圧シリンダーにて加圧してコンクリート内部へと供給する装置である。
コントロールパネルには、各種操作スイッチ、圧力・ストローク表示液晶パネルが備え付けられており、注入圧力の設定など、すべての圧入管理作業はこのパネルにて行う(図3.3-7)。
油圧式圧入装置を用いて施工する場合、試験加圧注入工、本加圧注入工ともに同一の装置を使用する。
油圧式圧入装置仕様 寸法;全長960mm × 全幅460mm × 全高455mm
容量;14.0 ℓ
分岐仕様;標準20分岐/台
油圧式圧入装置のリザーブタンク内に充填した抑制剤を加圧するための油圧シリンダーは、自動車用バッテリーを駆動電源としている。
油圧式圧入装置から各圧入孔への配管は、耐久性に優れた耐圧ホースにより行うことを標準とする
図3.3-8に油圧式圧入装置とバッテリーの配置例を示す。
3.4 配管装置
配管装置(図3.4-1)は、圧入装置内で加圧された抑制剤を施工対象コンクリート構造物まで確実に供給・分配するための装置で、下記の2種類で構成される。
①配管ホース
②分配器
抑制剤は、まず圧入装置から1本の配管ホースを通って分配器まで送られる。この分配器で必要本数に分岐させ、対象構造物に削孔した各圧入孔に分配させる。
使用する配管ホースは使用する圧入装置によって異なり、それぞれ表3.4-1に示す仕様となる。
3.5 加圧パッカー
加圧パッカー(図3.5-1)は、配管装置の各ホースをコンクリートの各圧入孔に固定するための装置であるとともに、圧入孔の口元部及び深部においてコンクリートに発生しているひび割れからの抑制剤の漏出・漏洩を防ぐために設置するものである。
標準の加圧パッカーは、圧入孔口元部のみに設置するシングルタイプであるが、(施工基準において後述する)試験加圧注入の結果により、深部にも加圧パッカーを設置するダブルタイプ(図3.5-2)へと変更することがある。
圧入孔に加圧パッカーを挿入し、ナットを締めてゴムスリーブを膨張させ、圧入孔内面との摩擦によって固定する。加圧パッカー本体は最大4.0MPaの注入圧力に耐える構造となっている。
加圧パッカーは圧入孔径によってφ10mm用、φ20mm用、φ34mm用の3種類があり、パッカー長とともに、必要となる圧入孔長や構造物の種別を勘案して選定する(「4.5 圧入孔(パッカー種別・圧入孔長)の検討」参照)。
表3.5.1に加圧パッカーの種類を示す。
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